こんにちは、神主のゴーフミです。
さて、今回は「私が奉仕している神社でアルバイトをしていた高校球児が、甲子園で大活躍した奇跡のお話(ノンフィクション)」です。
《もくじ》
- ◇神社にやってきた「高校球児のSくん」
- ◇アルバイト初日の大晦日
- ◇そして夜が明け2012年の「元旦」になった
- ◇そして翌年2013年の年末
- ◇そして翌年の2014年の夏
- ◇そして甲子園本番
- ◇大活躍だった「Sくん」
- ◇まとめ
◇神社にやってきた「高校球児のSくん」
私がご奉仕している釧路厳島神社は、お正月の三が日で、初詣の参拝者が「5万人」ほどいらっしゃいます。
(釧路市は人口17万人ほどで、北海道でも第5位の人口規模です。)
そういうわけで、とにかくお正月は「人手」が足りません。
そのため、高校生や大学生のアルバイトを頼むわけです。
さかのぼること、2012年の年末。
私はお正月の準備に向けて、年末年始のアルバイトを募集しました。
アルバイト募集要項は、以下のふたつ。
①境内の臨時ブースでお守りなどを頒布する「巫女さん」(高校生〜20代前半くらいの女性12名ほど)
②作業着を着て、主に力仕事をする「とにかく動ける男子」
(高校生〜大学生くらいの男性3名〜4名)
「巫女さん」のアルバイトは募集開始とともにすぐいっぱいになるので、とても人気です。
その一方で、力仕事をする「男性」はすぐには集まらないのが悩みなのですが…。
2012年には高校1年生の男子3名が応募してきてくれました。
「坊主の高校球児3人組!みんな1年生か!いいね〜。期待してるよ!」
「…。うぃっす。よろしくお願いしまッス」
アルバイトに先立って3人と面談した私。
質問にも元気に答える3人組。
初々しくて元気な彼らに大きく期待が膨らみました。
「高校球児は礼儀がしっかりしてていいねー。
頑張ってね!」
「うっす!がんばりやっす!」
話を聞くと、地元の高校の野球部に所属している1年生で、「部活の遠征費」をかせぐためにアルバイトに応募してきたのだそう。
3人の中でも、今回のお話の主役の「Sくん」は無口で表情を変えない子で、無骨な印象を受けました。
「Sくんも大丈夫かな?」
「…ッス。」
「???」
「(がんばり…ッス…。)」
「…が、がんばろうな…。(大丈夫か?)」
…そして面談を終えて1週間後、いよいよアルバイト初日の大晦日です。
◇アルバイト初日の大晦日
彼らの主な仕事は、お守りの臨時頒布ブースに「お守り」や「破魔矢」の入った大きな箱を運んだり…、
ストーブ代わりの「木炭」の火起こしを行なったりすること…などなど。
とにかく運ぶ物が多いので、体力がないと務まりません
「君たち、これは運んでー!」
「次はこれだよー!」
言われた指示を一生懸命こなす3人組。
評価は、可もなく不可もなく…というところ(笑)
「まぁ高校1年生だし、こんなもんか(笑)」
◇そして夜が明け2012年の「元旦」になった
元旦になると、アルバイトの高校球児たちは、今度は「獅子舞」の役を交代で行うことに。
朝9時から15時まで、「獅子舞の役」がメインの仕事となる。
「前で獅子の顔を持って操る係」と「うしろで背中を丸めて布をかぶる係」に分かれて、足並みを揃えて境内を歩く。
「うちの子の頭噛んでくださーい!」
と声をかけてくるお母さん。
「ボケないように噛んでくれる?」
と頭を差し出してくる年配のお婆ちゃん。
人で溢れかえる境内で5列に並ぶ参拝者の横を歩く獅子舞は、頭をカチカチ噛み続ける。
「動きをもっと獣っぽくすると盛り上がるぞ!」
「たまにEXILEみたいにくるくる頭を回すと見ている人が喜ぶぞ!」
など、役に立つのかわからない私のアドバイスに、真摯に耳を傾ける高校球児たち(笑)
「ガニ股にノシノシ歩くと、それっぽく見てるからやってみて。」
「…これ足腰鍛えられますね。守備力上がりそうです!」
「お、Sくんは常に野球に役立てようとしててえらいなーがんばれ!」
「…うっす!」
そんなかんじで、高校球児たちはしっかりと業務を全うしたのであった。
◇そして翌年2013年の年末
翌年も、またアルバイトを募集すると、またしても「Sくん」が応募してきた。
「今年もよろしくお願いします!」
「お、久しぶりだね!今年も頼むぞー。」
1年で体つきもしっかりして、体も雰囲気もひと回り大きく成長したSくん。
Sくんはアルバイト2年目ということもあり、要領良く正月から1月15日の「どんど焼き」まで、ガッツリ働いた。
基本はしっかり働いていたが、参拝者が途切れた時なんかは、そこらへんの木の棒を拾って「素振りの練習」をしていた。
「…まぁ、参拝者の列も途切れてるし、多少ならよしとするか。」
その日のお昼休憩の時、私はSくんと少し話をした。
「Sくんは、やっぱり甲子園目指してるの?」
「もちろんです!行けるかわからないですけどね。」
「神社で神様の目を盗んで素振りしてるくらいだから、熱意は本物だね!(笑)」
「す、すみません!」
「いや、からかっただけだよ(笑)甲子園行けるといいな!」
「はい!2年間も神社でアルバイトしたから、レギュラー取って甲子園行きたいです!」
「うん、神様は絶対みてるからな!応援してるぞ!」
「はい!絶対活躍してみせます!」
Sくんと話していると、自分も高校時代バスケ部で頑張っている頃を思い出し、懐かしい思い出がこみ上げてきた。
私は2軍の“万年補欠”で、試合も全然出してもらえなかったので、「神様、彼を活躍させてあげてくださいね!」とその時、心の中で切に願ったのである。
その時…!!!
「ゾワーーーーッ」っと、背中がゾクゾクして、鳥肌が立った。
不思議といつものような怖いカンジはしなかった。
「神様が願いを聞いてくれたのかな?」という気がしたのが今でも不思議である。
◇そして翌年の2014年の夏
年明けから半年ほど経ち、2014年夏になったある日のこと。
夏になると、平均気温20度ほどの私が住む釧路。
過ごしやすい1番好きな気候になってきた。
「おはようございまーす!お参りに来ましたー!」
「ちょっと神主さん!釧路のB高校が甲子園出るんだってよ!知ってた?」
毎月お参りに行く会社の社長さんが、慌てた様子で、開口一番にそう言った。
「そうなんですか!凄いですねー!…ちょっと待って!おおおおおおぉーー!!!」
なんと、あの「Sくん」の高校である!
「神主さんよ!これ見てみ!」
そう言って渡してくれたスポーツ新聞に大きく載っていたのは、あの「Sくん」である。
「釧路のスピードスターS選手が聖地を駆け回る!」
そんな見出しで始まった実際の新聞記事はこちら。
B高校の1番・二塁手のS選手(3年)が、初戦の相手、八戸学院光星(青森)の仲井宗基監督(44)から最も警戒する選手に“指名”を受けた。チーム一の俊足が攻撃の口火を切る。
自慢の足が突破口となる。釧路市のB高校のリードオフマン、S選手が敵将からマークされた。小林正人監督(26)と対談した八戸学院光星の仲井監督が注目選手に「1番打者」と口にし「(B高校は)足を使いますからね」と警戒した。50メートル5秒8はチーム最速。北北海道大会準々決勝の天塩戦では3回に二盗、三盗を決め一挙4得点のビッグイニングを演出した。小林監督からもキーマンに指名されるS選手は「どんな形でも塁に出て、盗塁を狙っていく」と力を込めた。
「釧路のみんなに甲子園での姿を見せたい」とS選手。チームの初陣初勝利を飾る快足を披露する。
「おおおおーー!!Sくん!そんなに凄いやつだったのかよー!!!」
私はその場で思わず叫びました(笑)
◇そして甲子園本番
いよいよ甲子園で「Sくん」が出場する日となった。
私は初めてB高校を甲子園に導いた「Sくん」を応援するために、テレビにかじりついていた。
相手は優勝候補の八戸学院。死ぬ気で応援しないと勝てそうもない相手だ。
3回まで0対0の激アツな展開。
「トイレに行きたいけど我慢だー!!!」
選手に負けないくらい気合いを入れる私。
そして4回裏。我らがB高校がチャンスを作る。
ここで、我らが「Sくん」に出番が回ってきた。
「Sくん打てよー!!頼むぞー!」
そして打席に立ったS。
「カッキーーーーン!」
「おおおおおおおおぉーー!!」
なんとSくんが打った!!!
そしてなんと相手がありえないエラー!!
「まじかよ奇跡じゃーーーー!!!」
一塁に全力で走り、セーフ!!!
ガッツポーズをするSくん!
そして号泣する神主!(笑)
さらに「Sくん」は盗塁を仕掛け、捕手の悪送球の隙に一気に三塁へ!!
一死三塁とし、3番打者の犠飛で1点を先制した!!
「Sくん大活躍で神がかってるやんけー!!!」
涙で画面が見えない私!!(笑)
試合は1対0のまま進んでいった。
「…このままいけるぞ!!」
しかし8回になると、次々にチャンスを作られ、あっという間に4点も取られてしまった。
8回裏になんとか1点を返したが、そのまま試合は終了。
2対4の悔しい敗戦となってしまった…。
◇大活躍だった「Sくん」
試合に負けはしたものの、我らが「Sくん」の活躍は見事なものだった。
「絶対神様が後押ししてくれたんだろうなー。」
涙でグチャグチャになった顔を鏡で見ながら、私はそう実感したのです。
「あんなに頑張って神社でアルバイトしたんだもん、ご利益あるに決まってるよな!」
私はそう確信し、「Sくん」の将来のさらなる成功を祈った。
◇まとめ
いかがでしたか?
みなさんも努力していれば神様が必ず見てくれていると思います。
いつも心は「清く正しく」し、人生の勝負の日の前には神社で手を合わせに行ってみませんか?
きっと、神様が助けてくれますよ。
それではまた次回ッ!